①真珠層を有する生きた貝の体内で
② 真珠袋(パールサック)が構築され
③ その袋内で形成される生鉱物であり
④ その表面全体が母貝貝殻の真珠層(「アラゴナイト」と呼ばれる炭酸カルシウムの結晶と、「コンキオリン」と呼ばれる有機基質の積層構造)と等質の層で覆われており
⑤ 宝石的価値を有するもの。
私達の身の回りには本物の真珠だけでなく、真珠に似せたフェイクパールや全く異なっていてもそれっぽい雰囲気だけで○○パールと呼ばれるものが沢山あります。
どこまでが本物の真珠なの?どんなものが真珠と呼んでいいの?というご質問も良く頂きます。
そこで今回は本物の真珠とはどんなものかについてご紹介します。
①真珠層を有する生きた貝の体内で
② 真珠袋(パールサック)が構築され
③ その袋内で形成される生鉱物であり
④ その表面全体が母貝貝殻の真珠層(「アラゴナイト」と呼ばれる炭酸カルシウムの結晶と、「コンキオリン」と呼ばれる有機基質の積層構造)と等質の層で覆われており
⑤ 宝石的価値を有するもの。
まず、真珠層を持っている事が一番に挙げられています。
例えば真珠が採れる代表的な貝あこや貝と同じ二枚貝でもあさりやハマグリは真珠層を持たないためこれには含まれません。
また、真珠層と全く同じ成分を持っていても試験管など貝の体内以外の環境で作られたものは真珠と認めらていません。
真珠貝殻から成分をとってコーティング材に使われているモノは一見それっぽく○○パールと言う名前がついている事もありますが、この条件から本来真珠と呼ばないということです。
最近ではダイヤモンドと同じ炭素を成分としたものがラボグロウンダイヤモンドとして市場に出てきていますが、これも本来希少な天然ダイヤモンドとは価値の異なるとても良く似た工業製品です。
同じようにいつか真珠もラボで作ることが出来る時がくるかもしれませんが、「真珠は水圏環境で貝が作るもの」と定めることで、そういった人工的なものと、美しい自然環境と生命からなる稀有な存在である真珠との差を明確にしています。
真珠袋(パールサック)という言葉は、余程真珠に詳しい方以外にはご存知ないと思いますが真珠が出来るためにとても大切な要素です。
簡単にご説明すると真珠貝に限らず貝は外敵から身を守るために、貝殻を成長させています。
その貝殻を成長させるのは外套膜という貝の組織でいわゆる貝ヒモの部分です。
貝殻の内側の成分と当時まだ天然しかなかった真珠の成分が同じであることが発見されました。
この貝ヒモの一部(外套膜上面上皮細胞)と何か別のものが体内に入り込むと、体内を守るために貝紐が成長してその何かを包み込みます。
これが真珠袋です。
真珠養殖はこれを人の手によって行っています。
偶然入った何かではなく「核」と呼ばれている厚みのある貝の殻を削って丸くした玉と、貝ヒモの一部を入れて真珠袋が構築される条件を作り、その中で真珠層を育ませているというわけです。
ここでまた聞きなれない言葉が出てきますが、生鉱物というのは正に生物が関与して出来る固体無機物質のことで身近なものだと歯や骨がそれにあたります。
貝も同じく生物が生きるために身を守るものとして貝殻がその役割を担いますが②でご説明した仕組みによって形成されたものでないと真珠とは呼ばないということです。
今ではこうして私もご紹介出来る真珠袋の仕組みですが真円真珠養殖の仕組みが日本で確立するまでは、世界中で研究されてもわからなかったことで世紀の大発明と言えます。
貝の体の中で出来るという事だけでなく、天然養殖問わず真珠となるための核となるものを覆うための袋が出来なければならなず、そこからさらに美しさを伴った珠になるための成分を分泌しようやく
するという事を考えただけでも真珠がいかに希少で価値のある宝石であるかを感じることができます。
ここまで来るともはや意味がわからないという位に用語も難しくなってきましたが、真珠が出来る貝殻と同じ成分でそれを具体的にふたつの要素で示したものです。
アラゴナイトは炭酸カルシウムの結晶で鍾乳洞の鍾乳石も同じようなものです。
これが貝の生体によって作られているのは神秘的ですね。そしてコンキオリンはたんぱく質だと思うとわかりやすくなります。
アラゴナイト結晶が積み重なるための繋ぎとなるだけでなく、薄く形成されるその結晶に弾力を与えるという作用もあります。
このふたつの要素が積み重なって貝の内部に入った「何か」を包み込んだものが真珠です。
養殖真珠の場合は人為的に入れた核を外套膜からとった袋が包み込むように成長し、その内側にアラゴナイト結晶とコンキオリンを何千枚も分泌しながら覆っていったものということです。
ちょっと難しくなりましたが、カルシウムとタンパク質の積み重ねであること。そのため他の宝石と異なりそれほど固くはないということにつなげて覚えてください。
最後は宝石的価値を有するものとありますが、宝石的価値とは何かというと美しさと希少性が主にそれに当たります。
美しいは価値観なので、変形でも、色が白で無くても、多少キズがあっても美しいと感じるのはひとそれぞれです。
一方希少であるというのは同じ成分でも無尽蔵に作られるものは宝石ではなくなるという条件です。
同じ宝石でも合成ダイヤモンドも全く本物と同じ成分である炭素から作られていてもこれを宝石とは認めないのと同じです。
しかし、真珠の場合は例えもし同じ成分であり見た目も真珠と全く同じ雰囲気であっても①~④までの要素をクリアしていないという要素が加わります。
真珠養殖の職人さんをはじめそれに携わる人たちが数多く携わる(一社)日本真珠振興会の定める基準としてはこの要素は大切にしていきたいということなのではないかと思います。
いかがでしたでしょうか?最近では益々技術レベルが高くなっていますのでイミテーションもかなり綺麗なものが存在します。
でも、真珠とは人類が一番最初に出会った宝石であり、養殖真珠が主流となったとはいえ、今も生きた貝の中でとれるということが大切にされています。
そして美しさの要因になる真珠層の積み重なりが大切であることやその仕組みが真珠と呼ばれるものの大切な要素になっていることがお判りいただけたかと存じます。